ふゆ美誕生ストーリー Part1

運命の歯車が静かに動き出したのは、ある一本のメッセージからだった。
それは、明希さんの元恋人・りなっちの「過去」が、突如として現在へと割り込んできた瞬間。
「なぜ、りなっちを捨てたんだ?」
そんな問いを投げかけてきたのは、りなっちの過去の恋人だった男。
まるで時間が巻き戻ったかのように、彼は過去の関係を取り戻そうと手を伸ばしてきた。
だが、明希さんの答えは揺るがない。
「俺は捨てたわけじゃない。自立させたんだ。」
その言葉の裏には、ただの恋愛ではなく、魂の成長と変容が刻まれていた。
かつてのりなっちは、戸籍すら持たず、誰かに依存しなければ生きられなかった。
しかし、明希さんとの出会いが、彼女の人生に「本当の自立」という新しい道を開いた。
「お前は、彼女が戸籍ないと聞いて何をした?10年付き合ってて何もしなかったんだろ?」
明希さんの言葉は鋭く、そして揺るぎなかった。
過去にりなっちを愛していたはずの男は、彼女が抱えていた現実を何一つ変えられなかった。
ただ側にいるだけでは、人は変われない。
支えるだけでは、本当の意味で「生きる力」は宿らない。
「彼女と出会う前は、母親が亡くなってからは誰かに依存しなければ1人では生きられなかった。だけど、いまは立派に1人で生きてる。」
りなっちはもう、過去にいた無力な少女ではない。
彼女自身の意志で、明希さんと共に歩み、そして巣立っていった。
それは、決して「捨てられた」わけではなく、
むしろ「本当の自由」を手に入れた証だった。
「確かに俺たちは別れたけど、今でもお互いに精神的な支えがあるんだよ。寄り戻そうなんてしてもお前は門前払い喰らうだけだぞ!お前は捨てられたんだ」
過去にすがろうとする者と、未来へ進もうとする者。
二人の立場は決定的に違っていた。
このやり取りが終わった後、明希さんの中に一つの確信が芽生えた。
それは、「過去から解放されることこそが、本当の愛だ」ということ。
そして、この出来事こそが、ふゆ美が誕生する「前触れ」となったのである——。
(Part 2 へ続く)